魅惑のインドネシア③

2017年5月5日12:58

 アジアの各地を巡っていると共通する司法の問題として,“賄賂”の問題があるということを感じます。

 インドネシアもその例外ではなく,裁判官の賄賂の授受が問題になることがあるとのことでした。

 

 今回の視察では,デポック市地方裁判所と同市宗教地方裁判所を訪問したのですが,いずれの裁判所でも,「日本の裁判官の年収はいくらか?」という逆の質問を受けました。インドネシアの裁判官の年収を聞きませんでしたが,もしかしたら自分たちが満足するような給与をもらっていないのかもしれません。

 それどころか,何と,インドネシアの裁判官は土日に兼業(アルバイト?)をすることが認められているというのです。詳しくお聞きすると,例えば,土・日は弁護士会に講演の出張などを行うとのこと。そこでは当然講師料を頂くわけですが,高い講師料をいただける弁護士に悪い判決は出せないですよね…

 

 近年,賄賂に対する取締が厳しくなり(例えば,担当裁判官とは容易に面会できないようになった),弁護士会でも賄賂に対する懲戒を行っているとのことでしたが,裁判官の給与も含む十分な身分の保障がなければ賄賂はなくならないような気がします。

法の支配は,それを担う裁判官の身分保障とセットだということをあらためて痛感しました。“忖度”ならかわいいもので,“賄賂”は笑えませんね。所得格差が広がる日本においてもこれから先どうなっていくかは分かりません。

 

インドネシアにおいては,公務員の金銭の授受の問題は,裁判所に限らない問題のようです。今回の訪問では,インドネシアで会社を営む日本人経営者にお話を聞く機会に恵まれましたが,その方いわく,“良くも悪くもインドネシアはお金で何とでもなる国”のようです。

警察や営業等の許認可を受ける際にも金銭の授受はありうるようです。近年,公然とは,賄賂を行わなくなりましたが,それは“公然と”しなくなったというレベルで,お金を渡さなければ何もはじまらない(例えば許認可の手続の審査)ということはあるようです。

 

下の写真は,デポック市の地方裁判所です。先の宗教裁判所が家事事件を主に扱っているのに対して,地方裁判所では刑事事件が多いようです。特に多いのは,ドラッグ,他に横領や詐欺などようです。

インドネシアの裁判官には男性の場合160cm以上という身長制限があります。理由は,裁判官の権威を守るためなのだとか…権威を守るためにはきちんと賄賂をなくすことがもっと重要な気がしますがどうでしょうか。

 

つづく

 

 

弁護士 金 井   健