家族と信託契約(財産を信じて託す)をするということのメリット①

2013年3月14日 15:20

例えば,以下のような事例の場合で家族に信託するということのメリットはどこにあるでしょうか? 

 

 

S(女・75歳)さんには,二人の息子,Tさん(長男・48歳)とBさん(次男・45歳)がいる。Bさんは先天性の知的障害を抱えており,現在SさんとBさんが二人で生活している。なお,Sさんの配偶者(夫)は既に亡くなっている。

Sさんは,障害を持って暮らしている息子Bさんの将来が不安なので,Tさん家族に,自分の相続財産を全て託し,将来Bさんの生活費の足しにしたうえでBさんの面倒を看て欲しいとTさん家族にその旨を伝えている(遺言書も作成している)。

 

※ そもそもこの事案の危険性はどこにあるでしょうか?

① Bさんがどのような範囲でSさんの財産を取得できるのか明確ではありません。

   Sさんは,Bさんが財産を相続したとしてもBさんのためにしっかり財産が使われるか不安を感じています。そこで,兄弟のTさんにBさんの相続分の財産も管理してもらいたいと考えています。

   しかし,ざっくり「生活費の足し」とか「面倒を看て欲しい」といった内容では,その内容が明確ではなく,BさんはSさんが意図していたような利益を得ることができない可能性があります。

   また,Tさん家族としては,「面倒を看る」代わりに報酬を欲しいと思うのが通常であり,その点もBさんの意図とズレが生じる可能もあります。

② Bさんのために使われるべき財産とTさん家族の財産が混同してしまいます。

   Sさんは,Bさんの兄弟であるTさんを信用して財産を相続させることにしました。しかしながら,このままですとBさんのために使用されるべき財産とTさん家族の財産が混同してしまいます。

   その結果,例えば,TさんがTさんの子どもの学費のためにその財産をあてたような場合や,Tさん夫婦が離婚をすることになってTさんの妻にBさんの生活費に充てるべき財産を財産分与してしまったとしてもそれを咎める法的な手段がありません。

③ TさんがBさんより先に死亡する場合の配慮がありません。

   Tさんが,Bさんより先に死亡する可能性も考えられます。Tさんに子どもがいれば,Bさんに相続権はありませんので,この場合もBさんの生活が確保されません。

 

→ この場合,Sさんを委託者,Tさんを受託者,Bさんを受益者として信託をすることをお薦めいたします。

 

【図】

 

 

【家族信託のメリット】

① 財産関係の明確化により親族間の紛争を回避することができます

② 受益者に対して確実に利益が回るようその財産を確保することができます

③ 自分がBさんの面倒を看られなくなった場合に備えて生前から信託することも可能です

④ TさんがBさんの面倒を看ている分の報酬を定めておくことも可能です

⑤ 受託者が受益者より先に死亡することに備えて,受託者を複数選任したり,X家族で社団を設立させて受託者とすることも可能です

⑥ 信託財産の残余財産の処遇についても予め決めておくことができる(残った財産については孫に相続させるなど)

⑦ 弁護士が受益者の代理人となって受託者を監督することができます

 

弁護士法人龍馬は,司法書士,税理士,医師や社会福祉士といったネットワークをもっていますので,信託をはじめ財産・事業の承継問題を相談するのは最適です。

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弁護士  金 井   健

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