「遺言」を書く前に知って欲しいこと(1) 遺言作成の問題点

金井健 2011年6月 2日

最近,弁護士会や市役所等が主催する法律相談会などに参加すると,

「遺言書の書き方を教えて欲しい。」   

 

「これで問題がないか見て欲しい。」   

 

という相談をお受けすることが多く感じます。  他方で,その答え方はとても難しいと思います。なぜなら,短時間の間で,限られた情報の中で,その遺言書に過誤がないかを全てチェックすること,あるいは完璧な助言をすることがほぼ不可能だからです。

   「弁護士さんなのにそんなことも分からないのか。」と思われるかもしれませんが,遺言書がその書き方や残し方によって後にトラブルになることが多いという現状を考えると,助言も慎重にならざるをえません。

 そもそも遺言はその方式によって3種類(自筆証書遺言・公正証書遺言・秘密証書遺言)に分けることができます。このうち,最も簡単に作成できる遺言が自筆証書遺言です。この遺言は,いつでもどこでも作成できるもので,遺言者が①その全文,②日付および③氏名を自署し,押印すれば十分なものです。 その意味でいえば,相談に来た方に対しても自筆証書遺言の作成方法を助言することも可能なのかもしれません。 しかしながら,最もトラブルが生じやすいのも自筆証書遺言です。

 具体的にいえば,財産の記載漏れ,間違い,遺留分相続人への配慮等内容面での不備があることがあります。内容に著しい不備があれば,遺言が無効となることもあります。さらには,保管場所にも注意を払う必要があります。分かりやすいところに保管すれば,相続人によって遺言書が改ざんされるおそれもありますし,逆に,自分にしか分からないところに保管すると誰にも見つけられずに終わる可能性もあるものです。

 そういった,自筆証書遺言の問題点から,近年,多くなっているのが公正証書遺言です。