行って感じた,カンボジア③

2015年6月17日 19:00

弁護士資格が国際ライセンスになる日は来る?

 

 さてさて,近年,発展著しいカンボジアでは多くの外資系企業が進出しています。日本企業の進出も増加しています。しかし,企業の進出にはリーガルリスクがつきものそんなときに心強いのは,現地法に精通している専門家です。

 

 私たちは,カンボジア唯一の日系法律事務所にも訪ねることができました。この事務所のパートナーである神木弁護士は,カンボジアの弁護士と協働して主に日系企業などに法律的なアドヴァイスを行っているとのことです。神木弁護士は,クメール語も堪能で,法文も原文のまま読むことができます。

 

 カンボジアの弁護士資格を有する者は,約900名程度(うち女性は180名程度)とのことでしたが,その中で外国語,特に日本語のできる弁護士はいたとしても極めて少ないでしょうから神木先生のように現地語の話せる日本弁護士の存在はとても重要です。他方で,カンボジア弁護士会では,カンボジア国内で外国弁護士資格ないし資格すらないものが活動していることに敏感になっています。

 

 カンボジア弁護士会の会長にお会いした際は,まず最初に外国弁護士の話題でしたから,関心の高さが伺えます。そして,カンボジア弁護士会では,特定の国の弁護士がカンボジア国内で活動したければ,カンボジアの弁護士がその国で活動できるよう協定を結ぶよう求めているようです。ちなみに,現在,そのような協定を行っている国はないとのことでした。しかし,パリの弁護士会とは前向きに話し合っているとのことです(リップサービス?)。

 

 「その国での活動」がどのようなことを意味していたのか(その国の法廷に立てるということなのか)までは判然としませんでしたが,他の国の弁護士資格で日本の法廷に立てるなんてことを認めようとしようものなら日本弁護士連合会は大反対でしょうから,協定の締結は極めて困難なことだと思います。しかし,仮に,パリの弁護士会がそのような協定をカンボジア弁護士会と結んだとしたら,法整備支援主導国である日本はどのような対応をするのでしょうか。

 

 また,このような協定が全世界で進んだらどうなるだろうかと妄想してしまいます。勿論,私が生きている間にそのようになる可能性は低いと思います。しかし,長い目でみれば,法曹資格はやがては国際資格となっていく可能性もあります。

 

 今,日本では,弁護士の数をこれまでよりも少し減らしていくような議論がなされています。もちろん,人数の問題ではないですが,来たるべき時代に備え,また議論を先導して行くには,ある程度の弁護士数を確保しておくことは必要なのではないかと思ってしまいます。

 

弁護士 金 井  健

 

つづく

 

 プノンペン市内は,インフラも急ピッチで開発が進む。今のところ,カンボジアに進出する日本企業は,現地の日本人を主な顧客とする場合が多い。そのため少ないパイを奪い合うことになる。徐々にカンボジア人向けにシフトしていくだろうか。