親族内事業承継
2013年6月 3日 16:31
「龍馬かばん」を経営している現経営者の龍馬太郎は,約40年前に鞄製造業を個人で開業した。その後,太郎は事業を法人化(株式会社龍馬かばん)し,現在では従業員約20名程度の規模になっている。
太郎には,子ども一郎,次郎,花子の3人がいる(太郎の配偶者は既に他界している)が,すでに後継者を長男の一郎と決めている。
太郎の現時点での資産は,株式会社龍馬かばんの総株式の90%分(9000万円相当),事業用地(時価1億3000万円相当),自宅マンション(時価2,000万円相当),現金その他500万円相当あり,株式会社龍馬かばんの2,000万円の債務について連帯保証している。
太郎は,一郎に事業を承継するため,全ての財産を一郎に相続させる旨の遺言を作成しようと考えているが…
この事例は,池井戸潤氏の小説「かばん屋の相続」をモデルとしたものです。この小説自体,京都の「一澤帆布」から着想を得ているということは有名です。
「一澤帆布」は,2つの遺言書を巡って大いにもめることになりますが,小説では,社長が生前に事業承継について思い描いた取り計らいが,死後,結果的にはよい方向に向かうことになります。
円滑に事業承継を行うには,先代社長の事前の入念な準備が必要です。
Q,太郎さんが事業承継対策を行う必要性はどこにありますか?
法定相続(一郎・次郎・花子,それぞれ法定相続分は3分の1)によると,自社株式や事業用資産を後継者に集中させることができなくなります。
例えば,株式が相続されると相続人の準共有となり全員の同意がないと議決権行使ができなくなります,また,不動産が共有となることで資金調達が困難になります。
このように,事業承継対策を行わないと,先代の死後,事業の停滞を招くおそれがあります。
Q,太郎さんが事業承継対策を講ずるときにどのような点を注意するべきですか?
一郎さんを後継者として全てを相続させるのであれば,他の相続人の遺留分や相続税は特に配慮する必要があります。
Q,遺留分や相続税対策としてどのようなことが考えられますか?
遺留分対策:議決権制限株式の発行,経営承継円滑化法による固定合意や除外合意の利用など
・ 税金対策:納税資金を残す・納税猶予制度の利用などの方法があります。
Q,遺言ではなく,生前贈与を行うメリット・デメリットはありますか?
メリット : 権利の取得時期が早い,確実性,執行行為が不要
デメリット: 現経営者が元気なうちから経営を退くことになる(ただし,種類株などで対応することもできます),特別受益該当性
・ 贈与税対策‥ 相続時精算課税制度の利用,納税猶予制度
Q,弁護士に相談した場合,どのような流れで事業承継を進めることになりますか?
Ⅰ まず,会社の現状の把握が必要になります(調査・分析)。
会社の状況の把握,経営者個人の状況 ,後継人の状況
Ⅱ 次に,後継者を決定します。
Ⅲ そして,実際にどのように後継者に事業承継するか, 事業承継計画を作成します。
Ⅳ 事業承継計画を実行します(遺言の作成,議決権制限株式発行など計画の内容によって異なります)。
Q,事業承継の相談や依頼をする場合,弁護士費用はどの程度がかかりますか?
① 事業承継に関しての相談(初回相談無料,2回目以降1時間1万500円)
② 事業承継の計画作成費用
会社の資産状況や内容などに応じて,ご相談させていただきます。
例えば,前述事例程度(標準)の場合,63万円(消費税込み)~
※ 顧問契約がある場合の料金は異なります。
③ 計画実行費用
遺言作成費用など応相談にて対応させていただきます。
弁護士 金 井 健
弁護士法人龍馬 http://www.houjinryouma.jp/