福祉関係者と弁護士の連携体制について③

2014年5月29日 12:12

弁護士の板橋です。

今回は,最近ご相談が多くなっている,養護者(特に同居の家族)からの虐待案件についてご紹介させていただきます。

 

1,私が最近相談を受けた案件で特徴的であったのは,同居している子が虐待により逮捕された,というものでした。立て続けに3件ありました。地域包括支援センター・施設ケアマネージャーの方々からのご相談になります。

  まず,3件とも,担当者の方々は,「警察から連絡が来たのだけれどもどのように対応すればよいか?」「虐待者の弁護人から連絡が来たがどのように対応すればよいか?」という点を心配しておりました。

  次に問題となるのは,虐待者が身柄を解放された場合,虐待者への対応方法でした。

  さらに,被虐待者も含めた家族全体への対応方法も当然に問題になります。

 

2,まず,①警察・検察・弁護人への対応です。

  警察・検察は,被害者である被虐待者の状況を確認し,加害者である虐待者の処分(裁判にかけるべきか,お灸を据えて釈放するか等々)を検討していきます。その為,被虐待者はもちろん,状況について見聞している関係者からも話を聞いていくことになります。

  弁護人からの連絡であれば,被虐待者への謝罪や示談協議の申し入れ等になるでしょう。

  いきなり,警察官,検察官,弁護士から連絡が入る場合,一般の方であれば当然驚くはずです。どうすればよいのか?何を話せばよいのか?不安になるでしょう。司法関係の用語は難解であり,理解も困難です。

  このような場合に,身近に相談できる弁護士がいることが重要です。

  施設によっては顧問弁護士がいる場合もあるでしょうが,現場の担当者からすると敷居が高いとの話も伺います。

  私は,各相談に対して,刑事手続の説明,処分の見通し等をご説明しております。今回の相談では,私がケア会議に参加した事案もあり,その時には,担当検察官へ連絡を入れ,現状を把握し,関係者へご説明させていただきました。

 

3,次に,②加害者である虐待者への対応です。

  虐待案件に特徴的であるのは,虐待者が何らかの精神疾患やアルコール中毒等に罹患している場合が多いことです。

  この場合,家族,被虐待者が入所する施設関係者,地域包括担当者のみでは対応が困難です。自治体担当部署へ応援の要請をし,保健所等から精神保健福祉士の方等の協力をお願いすべきでしょう。

  また,虐待者が特定の医療機関へ通院をしている場合には,医療機関との協力体制を築くことも重要になります。

  虐待者の通院確保の方法,服薬管理の方法,独立支援等,課題は多数ありますが,一つ一つ道筋をつけていかねばなりません。

  親の年金を不当に使い込むような経済的虐待の場合には,虐待者の独立のために,自治体生活保護担当部署,公営住宅担当部署等の方々の協力も必要となります。

  高齢者虐待防止法では,虐待者への支援も義務づけられております(法1条,14条)。その為,自治体内部において,地域包括と関係担当部署の協力関係を築いていただかねばなりません。

  この点は,自治体によって対応の温度差が非常に大きいと実感しております。

4,最後に,③被虐待者や家族への対応です。

  まず,虐待者と被虐待者を分離しなければならない状況であれば,躊躇なく分離措置手続を取らねばなりません。高齢者虐待防止法上も必要な手続になります(法9条,10条)。

  分離を要しない場合には,被虐待者との関係改善を図らねばなりません。

  この場合は,地域包括を中心として,当該ご家族をフォローしていく体制を築いてください。

  被虐待者である高齢者の判断能力低下が疑われる場合には,成年後見申立手続等の検討が必要です。家族による申立が可能な場合は,地域包括担当者による支援が重要です。他方,家族による申立が困難な場合には,市町村長申立を積極的に行うべきです。

  市町村長申立を行う場合には,専門職が成年後見人として専任される場合が多いでしょうから,自治体においては,司法書士会,社会福祉士会,弁護士会等の団体との協力関係を構築することが必要です。

  また,虐待者・被虐待者・家族に多額の負債がある場合も見受けられます。その場合には,弁護士等を入れて負債の整理も必要になります。

 

以上は対応内容の一部に過ぎません。虐待案件の場合には,実際にケア会議等を開催し,関係者を一同に集め,集中的に検討し,情報を共有することが大切です。

また,虐待の背景には,複雑な過去や家族関係が存在します。その為,各問題に対応できる専門職の協力関係が必要になります。協力体制を構築すれば,ノウハウの共有が出来,将来の事案に柔軟に対応が可能となります。

群馬県では,専門職の派遣事業を行っております。弁護士と福祉関係者の連携体制構築のため,ケア会議等を開催する場合には,積極的に専門職派遣事業を活用してください。

 

 弁護士法人龍馬は,積極的に福祉関係者と協力関係を築いております。

現在高齢者の抱える問題に直面している方はもちろん,今後そのような問題に出くわす可能性がある方々も,弁護士法人龍馬(電話:027-372-9119,担当:弁護士板橋)へご連絡をください。

 ぜひとも,協力して高齢者の抱える問題の解決に取り組みましょう。

 

 

弁護士法人龍馬HP http://www.houjinryouma.jp/