農地利用と信託

2013年2月19日 17:30

弁護士小此木です。

今回は,農地利用と信託というテーマでお送りします。

 

1.農業を成長分野とするために
 2013年2月18日,産業競争力会議(議長・安倍晋三首相)では,「農業を成長分野と位置づけて産業として伸ばしたい」と強調し,農地のフル活用を目指す。
「農地の活用では,全体の1割弱にあたる約40万ヘクタールの耕作放棄地の解消に取り組む。高齢で農業をやめる農家から都道府県が農地を一時的に借りる仕組みを設け,借り手が見つからない場合には農地を集約したうえで意欲のある農家に転貸する。すでに耕作放棄地となった農地は,他の農家が使えるようにするための手続を簡素化する。」という政策です。

2.農地を活用するためには,信託という仕組みを用いることです。
 委託者兼受益者を高齢者農家,受託者を農業法人として,高齢者福祉対策を行いつつ,農業を成長分野として農地活用をすることです。農家は,農地を信託財産として,農業法人に受託し,農地から得られる利益を言わば賃料として受益することになります。
 農家では,次世代の農業従事者がおりません。また,現在,農業従事者の平均年齢は,66歳です。農地を活用したくとも,従事者がおらず,ましてや自身の年老いた後の生活が心配となっています。農家にとって,信託という仕組みを用いて,農地という資産を活用することで自身の老後対策を行うとともに,政府が意図する農業を成長分野とする政策に合致することになります。

3.農地売渡信託等事業・農地貸付信託事業
 群馬県でも,財団法人群馬県農業公社が,農地売渡信託等事業や農地貸付信託事業をHP上で掲載していますが,実態として信託が締結されてはいないようです。
それは,委託する側の農家にとって,老後の安心が全く確保されていないからでしょう。農地の活用だけを声高らかに打ち上げても,農地を手放すことになる高齢者農家が安心した老後の生活を送ることができなければ,信託の利用は促進されません。
 そのためにも,やはり,農地の信託と一体的に高齢者福祉信託を活用しなければならないのです。
  

弁護士法人龍馬HP http://www.houjinryouma.jp/