なぜ成年後見に弁護士が必要なのか! その3

小此木清 2011年8月13日 10:49

後見業務の本質は,あくまでも高齢者が快適に老いるためにある。ところが,実際の後見業務は,高齢者の財産の保全に汲々とし,成年後見を担当する裁判所も,目下,後見人の不正防止(財産の使い込み)対策にあくせくとしている。その結果,推定相続人が当該高齢者の資産を確保できることになる。それゆえ,法定後見は,推定相続人の申立となる。 

しかし,本来,高齢者が築き上げた資産は高齢者の生活の質を上げるために用いられるべきだ。現況のように,高齢者の生活は,介護保険の提供によるレベルが基準となってしまっている。後見人もまた,介護保険によるレベルで高齢者の生活の質を確保しているにすぎない。同人の預金は,死蔵されているにも関わらず。 例えば,共感を呼ぶであろう事例として,障がい者の方が障がい者作業所で働いて得た月数千円の給料を1年ためて購入したティディベアを,一方で浪費として言い切ってしまい,当該購入契約を取り消してしまうことが,本当に障害者の幸せとは言えまい。むしろ,人として自己決定を尊重すべき観点からは,浪費ではなく快適な生活のために用いた消費というべきであろう。 


そして,高齢者がその資産を自分のために消費するなら,それはまさに,日本経済の活性化につながるはずだ。確かに,高齢者にとって,自分が生きている間にその資産が,底をついてしまう懸念があるため,消費することができないできた。しかし,最低限,年金で暮らしていくことができ,介護保険も存する。その間,快適に老いる生活を確保すれば足りる。現状の法定後見では,前述したとおり財産管理に汲々としており,快適に老いることは困難である。 


もし高齢者の方々が,認知症となったのち,自分のためにその資産を用いてほしいなら,しっかりしている今,自分の意思を反映させるための財産管理・任意後見契約を締結しておくことが必要だ。問題は,その費用の点である。「快適に老いる」を標榜する弁護士法人龍馬が,いかに安価でその高齢者に即した質のよい法的サービスを提示できるか,かつ,実行できるかにかかっているのだろう。