板橋俊幸 弁護士

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福祉関係者と弁護士の連携体制について27

~養介護施設従事者等による高齢者虐待対応現任者研修~

 

弁護士板橋です。

私は、高齢者・障害者虐待対応専門職チームのメンバーです。そのつながりから、先日、群馬県社会福祉士会が、群馬県から委託されて開催している「養介護施設従事者等による高齢者虐待対応現任者研修」の講師をして参りました。

この研修は、高齢者虐待防止法(平成18年施行)において、虐待対応の専門的人材の育成が都道府県や市町村の責務とされているものの、地域における虐待対応の専門的研修の実施には市町村の格差があるのが現状であることから、全国的に統一的な研修会を開催することにより、地域間格差をなくしていくことを目的としております。自治体担当者や地域包括支援センター職員等を対象とされています。

高齢者虐待防止法では、家族や親族などからの虐待(養護者による虐待)と高齢者施設における虐待(養介護施設従事者等による虐待)の2つの類型を規定し、市町村・都道府県における対応を求めております。今回は、そのうちの、後者に対する研修会でした。

 

研修会は、3日間かけて、講義・演習などで現場での対応を学んでいただくものになります。私は、研修会の最初の講義として「養介護施設従事者等による虐待対応における市町村・都道府県の役割と法の理解」というテーマで、高齢者虐待防止法の目的・定義・自治体における権限行使等についてお話をさせていただきました。

 

厚労省では、毎年高齢者虐待における統計を取っております。

https://www.mhlw.go.jp/content/12304250/000584234.pdf(全国版)

https://www.pref.gunma.jp/contents/100136468.pdf(群馬県版)

 

家族や親族による虐待通報等の件数と比較して、高齢者施設における虐待通報等の件数は、実態よりもかなり少ないと言われております。施設内での虐待はなかなか明るみに出ないことが多いようです。これは、家族からすると施設へお願いしているという心理があることや、施設側で公にならないように対応されてしまう、等が要因と推測されています。

 高齢者施設で虐待が起こる理由としては、「教育・知識・介護技術等に関する問題」、「職員のストレスや感情コントロールの問題」、「虐待を行った職員の性格や資質の問題」、「倫理感や理念の欠如」、「人員不足や人員配置の問題及び関連する多忙さ」等、複数の要因が重なり合って発生していると考えられております。

 

 高齢者虐待防止法では、高齢者施設での虐待を発見した者は、市町村等への通報義務が課されております。通報を受けた市町村等は、高齢者虐待防止法、老人福祉法、介護保険法などに規定されている権限を行使し、事実確認を行うこと、虐待されている高齢者を保護すること、当該施設に対して勧告・改善命令と出すこと、指定取消等を行うことにより、虐待対応をしていくことになります。

 高齢者虐待防止法では、虐待の定義として、①身体的虐待、②介護・世話の放棄・放任、③心理的虐待、④性的虐待、⑤経済的虐待を規定しております。これらの虐待行為は、それぞれ刑事罰に該当しうる重大な人権侵害行為です。

 高齢者の場合、虐待状況から自力で逃げ出すことは出来ません。そのため、通報等を受けた市町村等が、早期かつ適切に行政権限を行使することが非常に重要になります。

 

今回の研修が、県内の高齢者施設内での虐待対応に活かされることを願っております。市町村等の担当職員の皆さん、地域包括支援センター職員の皆さん、経験を蓄積・承継して、群馬県内の虐待対応力を向上していきましょう。

私も、専門職として、高齢者虐待防止・対応に積極的に関わっていきたいと思っております。